神と騎士と宵の夢


 夜風にも花の香りが感じられる、暖かな春の宵のこと。
 アビゴール・カインはフレイの町の参事達の会議から、夜遅く帰宅した。
 彼の背後で扉が閉まると、その黄金の髪が長く伸びながら色素を失ってゆき、腰まである銀髪に姿を変える。
 真っ暗な廊下を歩きながら、服の色は黒く、角や尻尾は剥き出しになってゆき、誠実そうな男らしい顔立ちが少しずつ女性的で冷笑の似合う青白い容貌に変化した。
「あー疲れた。全く人間どもと来たら、考えるのは目先の利益を守ることばかり……」
 愚痴をこぼしながら寝室の扉を開く。
 カーテンが閉められた部屋の中は真っ暗だ。
 ルビー色の瞳で小さな火花を送り、燭台の蝋燭に火を灯す。
 その仄かな光に照らされ、優雅な幾何学模様の壁紙と大きな天蓋付きのダブルベッドが浮かび上がった。
 音を立たぬよう、そっとベッドへ近づいて行く。
 愛しい人間がそこにうつ伏せになって横たわり、掛け物もせずにスヤスヤと眠っている。
 朝着ていた薄いシャツとズボンのままなので、自分を待ちくたびれたまま、うっかり眠りこんでしまったのだろう。
「こりゃ相当消耗してんなあ……」
 溢れた独り言に反省の色が混じる。
 レオンと一緒に暮らし始めてから、夜は時間の許す限り彼を抱いてしまうようになった。
 昼間は一日中菜園の世話をしたり、農家を手伝いにいったりして肉体を酷使している彼を、更に体力的に追い詰めてしまっていることは重々承知している。
 それでも抱きたいものは抱きたいし、レオンもどんなに疲れていても、心と身体の両方で抱いて欲しいと健気に訴えてくるので、どうしても歯止めが効かなくなってしまうのだ。
 ――そもそも、神と人間の体力は話にならないほど異なる。
 もう何百年も昔に、儀式によって助力を請われ、その見返りとして人間と交わった事があるが、その時には一週間、何十人もの男女が入れ替わり立ち代りに褥に現れて、カインは彼らを1人で相手した。
 同じ事をレオン1人を相手にすれば、彼は簡単に死んでしまうだろう。
 何も食べず飲まず、眠らずに何晩も交わり続ける事など、いかにレオンが人並みはずれた体力を持っていたとしても、不可能だ。
 体内に神の血を流し込んでやればする事自体は可能かもしれないが、やはり最後は精が尽きて死ぬ。
 レオンを大切にしたい。
 質の良いものを適量食べさせ、睡眠も適度に取らせ、時には充分に休養させて、慈しんでやらなければと思う。
 毎日毎晩それを実践しようとしている筈なのだが、なかなか本能が言う事を聞いてくれない。
 眠っている彼の背中が、以前よりも少し痩せてしまった事を考えると、悩みが深まる。
(いっそ、24時間オスカーのままで居た方が踏ん切りがつくかもしれねーけど、寂しがりそうだしなあ)
 ベッドに腰を下ろし、そっとレオンの黒髪を撫でる。
 片側の頬をシーツに付けて眠っている彼の薄い瞼と、黒々とした長い睫毛に見とれる。
 開いている唇はぷっくりと少し厚めで、昨日の晩この唇に咥えさせた事を思い出すと堪らなくなる。
 絹のような髪の感触を楽しみながら、両手をついて覆いかぶさるように倒れ、その後ろ首に唇を押し付けた。
「う……ん……」
 身体の下でレオンが愛らしい呻きをあげる。
「オスカー……お帰り……」
「今はオスカーじゃねえよ」
 思わず声を強めて鋭く突っ込んでしまう。
 自分のことと分かっていながら嫉妬してしまう何とも複雑な心境だ。
「う……? カイン……?」
 レオンがぴくんと指を震わせ、自分の頬の上に落ちたカインの髪を掴んだ。
 どうやらさっきのカインの声で起きてしまったらしい。
(しまった……)
 起こすつもりは無かったのに、かわいそうな事をしてしまったと後悔する。
 だが後の祭りだった。
「帰ってたのか……カイン」
 レオンがそのあどけない顔立ちな溢れるような笑顔を浮かべ、身体を倒して仰向けになった。
 両腕が首筋に抱きついてきて、肩に顔を埋めるようにしてギュッと抱き締められる。
「良かった……お前がちゃんと帰ってきて……」
 嬉しくて仕方ないといった甘い声でそんな事を囁かれて、下半身の血流が激しくなる。
「帰ってくるに決まってんだろ、ここが俺んちなんだから。さっさとまた寝ろ。俺は書き物がある」
 カインはなるべく優しくレオンの両腕をもぎ離した。
 旅商人に預ける手紙を書き、この地の復興に必要としている農耕具や、農作物の種を買い付けなければならない。
 町の有力者である参事にすら満足に共通語を読み書きできるものが少ない上、相場の値段というものを知った上で外国人と交渉できる人間もいないので、自分が引き受けるしかなかった。
「……。それなら、終わるまで待ってる」
 レオンが唇を尖らせ、ベッドの上に膝を抱えて座った。寝ぼけているのか、その口調が少し子供っぽい。
「待っててどうすんだよ……いつまでかかるか分かんねえぞ」
「お前のこと横で見てる……顔を見ていたいから……ダメか?」
 こういう時、レオンのことを悪魔的だと思ってしまう。
 純で頑なな性格や態度の中に垣間見える可愛らしい隙で、無自覚に他人の好意を惹きつけ、恋の奴隷にしてしまうのだから。
 彼への好意一つで命を失ったものさえいるという事を、レオンは未だに自覚していない。
「……わーかったよ。仕事は朝にする」
 溜息と共にベッドを軋ませ、彼の隣に身体を投げ出した。
 すぐに、レオンが嬉しそうに、カインの胴を跨いで覆いかぶさってくる。
「……キスしたい……」
 じっと顔を見つめられながら切実な口調で言われ、わざと面倒臭そうにその唇に一瞬チュッと吸い付いてやった。
「ほら、キスしてやったぞ。さあ寝ろ」
 寂しそうに眉が下がり、ハシバミ色の瞳が揺れる。
「……分かった……」
 レオンがカインの上から降り、隣に横たわる。
 せめてもとぴったりとくっつけられた背中から、直接カインの身の内に流れ込むように子供のような声が聞こえてくる。
 ――寂しい、寂しい、カインのキスが欲しい、抱っこして、触って欲しい……
(って、『抱っこ』って、何でこいつは欲望がいつも子供丸出しなんだよ!?)
 本人に自覚が無いから突っ込むことも出来ない。
 いつものことだが、あまりに禁欲的に育つと情緒面の成長が止まってしまうのではないかと心配になる。
「……っ。仕方ねえなあもう……っ」
 レオンを背中から強く抱きしめ、薄いシャツを下に引っ張って脱がせながら背中に口付けを落とす。
「っ、カイン……っ、寝るんじゃないのか……っ?」
「お前がそれを言うか」
 思わず嫌味を言いながら手を前に回し、脱げかけたシャツの中の二つの乳首を強く摘み上げる。
「男のくせにデカくてエロい乳首しやがって……お前またこのシャツのまんま出歩いて、農夫どもに透けた乳首見せつけてたのか」
「ンッ、見せつけ……っ、てるわけじゃ、」
「色までしっかり透けてんだよ! 」
 キュウッと限界まで引っ張ってやると、レオンの美しい背中が淫らに仰け反り、その唇から熱っぽい喘ぎが漏れ始めた。
「あぁっ……っ」
「ほら、その淫乱なオッパイにキスして吸ってやるから、さっさとこっちむけ」
 レオンが素直に身体を反転させてこちらを向き、銀髪に指を絡めてカインの頭を抱き寄せる。
 彼の乳首の周りの柔らかい乳輪を舌で押すように舐め回し、乳頭を唇で引っ張るように強く吸ってやると、恋人は切ないような高い声を上げ、夢中になって感じ始めた。
「ッア、んっ、気持ちい……っ、はぁぁっ、ァっ」
 もう片方の乳首も乳頭を持ち上げるように舌を絡めてやり、離した乳首は唾液を絡めるように指で擽り慰める。
 充血した淫らな粒にわざと犬歯を立てて噛んでやると、一層悦びの声を上げてビクビクと腰を悶え、勃起しきったペニスを布越しにカインの腹に擦り付けてくる。
「あぁぁっ……! そ、それは……っ、い、イキそうになるから……!」
「痛いのでイッちまうって? おまえ、変態入ってるぞ」
「だって、気持ちいい……」
 すっかり敏感に育った乳首からもたらされる深い快感にすっかり溺れているのか、見上げるとレオンの眼差しはトロンと蕩けている。
 乳頭を歯で甘く噛んだまま引っ張ったり、わざと大きな音を立てて吸ってやったりしている内に、そこは赤く腫れたように色付いて、レオンの色白な胸筋の上で明らかに存在を主張し始めた。
「ん…ァ……もっと……」
「もっと? 俺はよそじゃ一応お前のご主人サマなんだぜ、騎士殿。お付きの騎士らしく、敬語で頼んでみな」
 カインが意地悪く要求すると、レオンは眉を下げて逡巡した挙句、呟くように唇を開いた。
「お、俺の、胸を……胸を吸って……ください……」
 わざと脇下に近いところを舐め上げ、じっと顔を見上げる。
 レオンは益々泣きそうな表情になり、恥ずかしそうに身体中を真っ赤にしながら言葉を付け足した。
「乳首……乳首にっ、……」
「お前の? この、イヤラしい形に勃起してる奴にか?」
「俺の、イヤラしい、乳首をっ……! 吸って、噛んで下さい……っ」
「上出来だ、俺の騎士殿……」
 恥ずかしそうなくせに淫らに蕩けた表情とその言葉に、下肢にゾクゾクと興奮が走る。
 望みの通りに乳首を吸い上げ、その根元に犬歯を立てる。
「ひっう……っ!」
 唇の下でビクッビクッと胴が痙攣し、レオンの薄いズボンの布地に染みが広がる。
「まーた服着たままオモラシしちまったのか?」
 一度達して恥ずかしくなったのか、彼は呻きを上げながら両手で顔を隠してしまった。
「っく……だ、だって、……我慢が出来な……っ」
「シモの躾のなってねえ騎士殿だなあ……?」
 両手でズボンをくつろげてやり、まだ萎え切らないペニスと白く引き締まった尻を露出させる。
「あーあ、何処もかしこもスケベな汁まみれにして。そんなにオッパイが良かったのか?」
 まだビクビクと震えている濡れた陰茎を手の平で撫で扱き、残っている精液を吐き出させる。
「ウッ……ン……!」
 別の手で赤子の肌のような滑らかな感触の尻をゆっくりと撫で回してやりながら、尻尾をその狭間に潜り込ませた。
「はぁっ……カイン……カイン、中を……っ」
 レオンは自分で膝に纏い付く服と下着を脱ぎ捨てると、太腿を大きく開き、その先端を嬉々として受け入れた。
 彼の直腸を交接の為の性器に変える為に、中を優しく刺しながらほぐしてゆく。
「んっ、はぁっ……もっ、もっと奥までくれ……っ」
 以前は嫌がっていたのに、今は太い部分まで入れて欲しがるようになった彼が愛しくて、可愛くて堪らない。
(毎晩じゃ足りねえ……この屋敷に閉じ込めて、俺の他、誰にも会わせずに、穴開きっぱなしになる程ずっとハメ続けて、俺しか見えねえようにして、全部俺だけの物にしちまえたら――)
 危険な事を考えかけていた最中に、ハッとした。
 中が少し、腫れている感触がする。
 カインの尾を食んでいる襞の一つ一つも擦れて紅くなっていて、痛々しい。
 駄目だ、と思考が止まる。
 彼自身は欲しがっていても、その身体は神を1人で受け入れ続けるにはあまりに脆い。
「レオン……」
 名前を呼びながら優しくそっと髪を撫でる。
 眼下の恋人は嬉しそうにその手に頬を擦り寄せてきた。
「――やっぱり、今日はやめる」
 額に優しく口付けながらそっと尾を抜く。
「どうして……? 疲れているのか……?」
 レオンが切なく揺れる瞳で自分を見上げて来る。
(――疲れてんのは、お前だろ……と言ったって、素直に聞いて寝るようなタマじゃねえよな……。体力には自信があるとか言い出して、元の木阿弥だ)
 困り果てた挙句、カインはじっと彼の瞳を見つめて真顔で言った。
「俺が疲れてるからだ」
 正直なところ、人間に付き合って精神的に疲れることはあっても、肉体的には1ヶ月くらい眠らなくても全く平気な身体だ。
 だが、そういう事にすればレオンも諦めるだろう――そう踏んでいた。
 ところが、相手は予想外の反応を返して来た。
「じゃあ、お前は何もしないで寝てていい……! 俺がするから……っ」
「は……?」
 半ば怒ったような口調の相手に思わず絶句した所で、無理やり胸を押されてベッドに押し倒された。
 カインの漆黒の服のホックが飛ぶ勢いでブチブチと外され、無理矢理ズボンの前立てを広げられる。
 腰の上に体重を掛けて乗られ、言葉とは裏腹に精力に溢れ屹立するペニスを掴まれた。
「入れるから……中で出せっ」
 睨まれながら恫喝されて、益々困惑する。
 そうこうしている内にレオンが熱い怒張の上に引き締まった尻を落とし始め、ズニュ……と亀頭の先端が濡れた温かい肉感に包まれ始めた。
「……っうっ……」
 思わず呻きを上げ、その感触に堪える。
 体幹の筋肉とそこに繋がる神経が異常に発達しているせいか、レオンは四肢の隅々の筋肉まで、自分の意思で的確に動かせる部分が人よりも多い。
 そんな男が、長年をかけて雄を締め上げ射精させる動きを覚えているものだからタチが悪い。
 今まで抱いて来たどんな男とも女とも違う淫らな肉の蠢きでペニスを愛撫された上、その相手は女どころか自分という神以外の存在を知らない、純潔の身体。
 更に恥ずかしげに目元を染めながら抑えめな可愛い喘ぎ声を上げ、結合部と濡れそぼったピンク色のペニスを見せつける体勢で夢中で腰を振るものだから、こちらの理性が飛ばない訳がない。
「待てっ、レオンっ、っとにお前は……っ!」
 身を起こし、汗ばんだ胴を両腕で捕まえて、激しい動きをやめさせる。
「あっ、うあ……っ」
 貪っていた快楽を途中で奪われ、レオンが眉を下げて涙ぐんだ。
 そのまましゃくり上げ、嗚咽を始めた彼に、驚き戸惑う。
「ちょっ、何泣いてんだよ……」
 レオンが両手で目尻を拭いながら俯き、堰を切ったように訴え始めた。
「……分かってるんだ……俺ばっかり、こんな……お前が欲しくて……疲れてんのに無理させて…………でも、止められなくて……っ、情けない……ごめん……」
 白い頬を涙で濡らし、謝る彼が、どうしていいか分からない程愛しい。
「馬鹿、無理なんかしてねえよ……っ」
 ――お前が人間でさえなければ、そんな事はないってこと、体で分からせてやれるのに。
 けれどそれを言えば、彼はもっと無理をして更に自分に合わせ、応えようとするだろう。それは出来ない――。
「ほら、ちゃんと俺が動いてやるから。反対向け」
 促してやると、繋がったままレオンが徐々に体の向きを変え、背中をこちらに向ける格好になった。
 姿勢を起こしてその体を後ろから抱き締め、耳の後ろにキスしてやる。
「泣くな。……ちゃんと愛してるから……お前を……」
 キュウンとレオンの体内が強く反応し、ぶるっと腕の中の体が震える。
 膝を抱えてやり、その姿をクローゼットの側に立て掛けるようにして置いた大きな鏡に映して見せる。
「俺だってお前に無理させたくねえんだよ。ほら見ろ、お前の穴、血い出そうに赤くなってるだろ」
「ちょっ、あ、映すな……恥ずかしいっ……」
「恥ずかしがってる場合か。昼間も疼いて痛痒くなってる癖に、無理しやがって」
「分かったっ、分かったから、…ん……っ、」
「見えねえけど、さっき中も腫れてたぞ。お前だって、こうしてて痛いんじゃねえのか? ほら」
 少しずつ確かめるように優しく動き、注意深く相手の反応を見る。
「はぁっ……、んっ、痒くて、熱い、……ウズウズする……」
「やっぱ腫れてんじゃねえかっ……、どの辺だ」
「奥、っア、痒い……濡れると、擦って欲しくなって、……辛い……」
「この辺か?」
 ヒクヒクと誘うように痙攣している肉壁を奥まで擦ってやると、レオンが体を戦慄かせて嬌声を上げた。
「っそこ、そこ……ジンジンして……響く……っ、あっ、ダメ、だっ、お前の当たるとこ、全部気持ちいい……っ、」
(――って、そういうプレイしてるんじゃねえんだよ!)
 レオンの淫らな実況につい巻き込まれそうになり、心の中でどうにか自分を立て直そうとする。だが、相手はそんな葛藤を知る由もない。
「……乱暴にしていい、から……奥を、いっぱい突いて……っ、俺の中で出して欲しい……っ」
 振り向いて見上げながら恥ずかしそうに訴えられて、理性がブツンと途切れた。
 凶暴な衝動が全身を支配し、繋がったままレオンをうつ伏せにベッドの上に倒し、尻だけを高く上げさせ穿つ。
「もっと言ってみろ……どこを突いて欲しいって?」
 覆い被さり、耳元で囁いた。
「尻のっ……お、くぅうっ……!」
 言い終わらない内に下肢が持ち上がるほど強くズンと根元まで突き上げてやり、その背中に強く痕を残すキスを繰り返す。
「加減してしてやってんのに、毎回お前は……! そんな中出ししてほしいんなら、穴開きっぱなしになるくらいハメ続けて、俺のを垂れ流し続けるようにしてやろうか……!」
 少しずつ突き上げのピッチを速めていくと、レオンの後孔がズチュズチュと激しい水音を立て始めた。
「あぁ……カイ、ン……はぁあ……っ」
 深い快楽に溺れ、既にレオンの目の焦点は合っていない。
「ほら、ケツ穴拡げられてイく寸前の自分のアヘ顔、しっかり鏡で見ろ」
「いっ、やだ、……あぁっ……!」
 髪を掴んで鏡に視線を向けてやり、激しく皮膚が弾ける音をさせてレオンを思うままに犯し始める。
 ただ、時間が長くかからないように、尾を彼のペニスに絡めて扱き、射精を促した。
「ぁあ……っ、それっ、また出る……っ」
 激しく犯されながら性器を慰められ、レオンが唾液をこぼしながら高く上げた尻を震わせ始める。
「あっ……あぅっ……っ」
 鏡には、雄を咥え込んだままビクンビクンと淫らに腰を上下に振り、淫猥に絶頂する騎士が映っている。
 蕩けるような表情をしたレオンの内側の肉襞が、まるで吸い付くようにカインの雄にからみついた。
「くっ……」
 イく寸前ギリギリに抜き、白く引き締まった尻に白濁をドプドプとぶちまける。
「あ……!」
 レオンは切なそうに声を上げたが、仕方がなかった。
 彼の中に出せば、後で掻き出す時にまた粘膜に負担を掛けてしまう。
 汗ばんだ体を起こし、代わりに強く抱き締めてやりながら口付ける。
「ん……」
 眠そうに、だがとても幸せそうに目を閉じた恋人が愛おしい。
 風邪を引かないように、ベッドサイドのチェストから布を出し、汗ばんだ体と体液をざっと拭く。
 毛布でそっと体を包んで寝かせてやると、また疲れが出たのか、レオンは気絶するように眠ってしまった。
(……人の気も知らねえで……)
 後悔と燻るような物足りなさと、甘い疼きが胸に湧く。
 この感情は恐らく、短い命を無くすまでずっと纏わり続けるに違いない。
 彼の寝顔を確かめ、残った仕事をする為にベッドを離れようとする。
 ところが、ぐいっと身体の一部が引っ張られる感覚があり、何かに引っかかったように前に進めなくなった。
 振り向くと、レオンの手がしっかりと白い尾の先を握りしめている。
「犬の鎖じゃねえんだよ……」
 呆れながら呟き、くすっと笑みながら彼の隣に戻る。
 彼にこんなにも愛されるようになるとは、ほんの少し前までは考えられなかったことだ。
 自分が彼を深く愛するようになったのは、一体いつからだろう。
 忘れてしまう程昔だ。
 髪に触れると、レオンの願いが伝わってくる。
 一緒に眠りたい、どこにも行ったら嫌だ、傍に居て欲しい――。
 今は彼だけの願いを叶える神として、カインは愛しい人間の隣で、そっと瞳を閉じた。

end