ある日の二人


 三ヶ月に一度、発情期が来ると、俺は獣人の旦那さんと一緒に家を留守にする。
 息子達と娘――三歳の双子兄弟と、二歳のその妹は親戚にバラバラに預かってもらう。
 その間の数日間だけが、俺たちが二人きりの恋人同士に戻る時間だ。
 毎回預かってもらうのは申し訳ねえし、普段は親の顔をしてるのに、照れ臭いけど……お互い凄く楽しみにしてる習慣で。
 っていうか、物凄く楽しみにし過ぎて、そこに合わせて仕事も休暇とって、ワクワクしながら待ってたのに――。


「もうっ、渚のやつ……。こんな時に限って出張って……」
 マンションの別室に住む母親の手を借り、子供三人をやっとの思いで風呂に入れて寝かしつけた俺は疲れ果て、リビングのソファにうつ伏せに倒れ込んでいた。
 ちょっとでも明るいと子供が寝ないので、家中真っ暗だけど、電気つける気力もない。
 やっと自由時間なのにな……。
 いや、子供はメチャクチャ可愛いよ。
 特に岬と航なんて、つい最近人間になれるようになったばっかりでさ。
 航は金髪でちっちゃい渚みたい。
 完全な人間になるのはまだ難しいらしく、よく狼男みたいに顔に毛を生やしてるのが可愛い。
 岬はほぼ黒髪で俺にソックリ。航よりも先にアッサリ人間の姿になれたみたいで、言葉も達者。
 てっきりおんなじ顔になるもんだと思ってたけど、性格も見た目も違いがハッキリしてきて面白い。
 俺が言うのもなんだけど二人ともハンサムに育ちそうで今から楽しみなんだ。
 でも、仕事しながら三人育てんのはやっぱ、尋常じゃなく大変だ。
 俺と渚の関係も、日常生活では前みたいに色っぽい感じになる事なんか殆どなくて。
 だから、俺たちが性的にも愛し合ってるアルファとオメガだって事、思い出せるのは三ヶ月に一度の睦みあいの時だけだったのに。
「それなのに、何でいねえんだよ、渚ぁ……っ」
 寂しすぎて情けなく独り言を漏らす。
 もし渚が居たら、今頃、一緒に風呂に入って洗いっこしてたんだろうなぁ、なんて思ったりして。
 生でしても妊娠しないように毎日ピル飲んで、身体の準備もしてた。
 仕方のない事なんだけどな。
 うつ伏せになった腹の下で、ちんこが熱っぽくズキズキして収まらない。
「……薬、飲んで寝るか……」
 薬は、子供が手を出せないように、ベビーゲートで仕切ったキッチンの引き出しに入っている。
 取り敢えず電気、つけなきゃなと重い身体を起こし、床に足の裏を付けた途端、聞き慣れたコール音が静かなリビングに高く鳴り響いた。
「!」
 慌ててローテーブルの上で光っているスマホに飛びつく。
 画面に映し出されているのは、愛する夫の名前と愛おしすぎるゴールデンレトリバーの顔だ。
「っ、もしもしっ」
 通話ボタンを押しながら声が裏返ってしまった。
『……湊? 良かった、まだ起きてたんだ』
 低くて甘い、俺の大好きな声が耳に届く。それだけで体の芯がキュンとなって、発情期だなぁ……と思う。
「いや、もう寝ようとしてたとこだけど……。渚、仕事は? 新しい支社立ち上げたんだろ」
『うん、開所式もそのあとのパーティも終わって、上手くいったよ。子供達は寝た?』
「今は寝てるけど、さっきまですげえ大暴れして大変だった。航は保育園で昼寝しすぎて体力余ってんのかずーっと走り回ってるし、仁美は岬に噛みついて泣かせるし」
『えっ、岬大丈夫!?』
「怪我とかはしてない。そんな強く噛んだ訳じゃねえから……仁美的には遊んで欲しかったらしくてさ」
『怪我してないなら良かったけど。仁美もまだ兄さん達と一緒のことが出来ないのがもどかしいのかもね……』
 渚の穏やかな声を聞いていると、凄くほっとする。
 話を聞いてもらえて、それだけで、疲れ切ってた心身がかなり軽くなった。
「うん、そうだな……。電話、有り難うな、渚。明日もまだそっちで仕事なんだろ? そろそろ風呂入って寝ろよ」
『あ、待って……その、もう少し話してられないかな。湊の声聞きたくて』
 色っぽい響きの口調でそうせがまれて、ゴクンと息を飲む。
「声聞いてたいって言われても……。何話せばいいんだよ」
『……何でもいいんだ。湊の声が好きだから……高い声っていう訳じゃ無いのに、華があって、艶っぽくて……』
「あははっ、渚の方がよっぽどいい声だろ? 近くで囁かれたらぞくっとする」
『ほんとに? 今でも?』
 相手からは見えてないのに、俺は無意識に、笑顔で何度も頷いていた。
「今でもだよ……会いたい……」
 ソファに背中を預けてどさっと座り込み、指先でつっと股間を撫でる。
 寝間着がわりのスエットパンツの下で可哀想なくらい勃起してる、俺の息子。
 せめて一回慰めてから薬飲んで寝るのも悪くないかもしれない。
 子供達の寝てる和室の襖がしっかり閉まってるのを確認して、甘い吐息をつく。
「渚とセックス、したい……」
 スピーカーから、ごくっと息を飲む音が聞こえた。
『みっ、湊ごめんね……、その、急にこんなことになっちゃって……』
「ホントだよ。
いつもちゃんと休み合わせてくれんのに、珍しいなって、……」
 渚にバレないように、ウエストのゴムを引っ張ってギンギンになってるペニスを取り出す。
 竿をゆっくり指で擦り始めながら、電話越しの渚の声に集中した。
『俺もね、凄く湊としたいよ……。俺がいなくて寂しかった?……』
「んっ、寂しいに決まってるだろ……? 発情っ、してんのにっ、俺……っ」
 ちんぽを擦る指を微妙に強めながら、密かに息を上げる。
『湊? 薬飲んでないの……?』
 心配そうな声が訊いてきた。
 もしかして、バレたか?  いやいや、大丈夫なはず。
「ちゃんと飲んでるよ。渚がそばにいなけりゃ俺、ちゃんと薬、効くし……別に平気……」
 誤魔化すように俺は平静を装って答える。
 実は前を擦ってるだけじゃ物足りなくなって、スエットのウエストを尻まで下げてる所だけど。
『ほんとに……? なんか湊の声エロいから、一人で触ってるのかと……思った』
 ドキーッと心臓が跳ねて、手が止まった。
「んなことしてねーよ。子供起きてくるかもしれないのに……」
『だ、だよね』
 なーんて……最近は三人とも一度寝たらまず起きなくなってるから、全然平気なんだけど。
「なぁ、渚、好きって言って……」
 気を取り直し、膝を持ち上げて足の裏を座面に持ち上げる。
 畳んだまま放ってあったバスタオルがソファの背に乗ってたので、それを掴んで足元に敷いて、和式トイレでしゃがむみたいな格好して。
『湊、好き、抱きたい……エッチになってる湊の体に触りたい……』
 俺はちんぽを弄るのをやめ、その後ろの、濡れて柔らかくなってる尻の穴を指先で撫でた。
「うン……っ、なあ、帰ったら、どんなことしたい……?」
 ひそひそ声で訊くと、渚が熱っぽく答えてくれた。
『そうだな……湊をベッドで目隠ししてね』
「くふっ、変態っぽいな……それで……?」
 指先をクプッ、クプッと中に出し入れしながら目を閉じて渚の声に集中する。
『獣になったり人間になったりしながら、足の裏もお尻の穴もおちんちんも、乳首も脇の下も首筋も、いっぱい舐めてあげたい』
 目を閉じてると、本当に体中を渚の犬舌にぬるぬる舐められてるような気がして、堪らない。
「あ……っ」
 Tシャツの下では乳首が痛いほど勃って、立てた太腿もヒクヒク震えてる。
 つぷぅ、っと指をアナルの中程まで挿入して、俺は震える声で続きを促した。
「あっ、あとは……っ?」
『――目隠ししたまま、恥ずかしい格好で奥まで挿れてあげる……』
 組み敷かれて挿入された時の体重の重さとか、触れるふさふさした毛の温かさとか、粘膜の淫靡な摩擦とかを……想像して、ヒクンと穴が締まり、トロリと液体がそこから溢れ出て指を伝う。
 堪らずにズプズプと指を中に入れて内側を掻き撫でるけど、全然もの足りない。
 根本にコブの付いた、渚のチンポじゃなきゃ……。
「はぁっ……渚……無理……っ」
『無理って……どうしたの? 湊っ、もしかして体調悪いっ?」
 やばい、俺。
 発情しすぎて、オナニーしてるの内緒なこと忘れてた……。
 でも気が付けば恥ずかしいとかそういうタガも外れていて、エッチな飢えを満たすことばかりで頭がいっぱいになってゆく。
「違う……一人じゃイケない……さっきから弄ってるのに全然……っ」
『みっ、湊っ』
 あっ、――電話口で絶句された。
 でも俺、止まれねえし。
「なぁあ、何かやらしいこと言って……さっきみたいなの……そしたらっ、イケるかも……っ」
『い、イキたいの? 湊……』
「ん……収まんないから、何とかしてくれ……渚のせいだぜ……」
 ハフハフと息を上げながら言うと、渚もそういうモードになったのか、急にぐっといい声で俺に指示を飛ばしてきた。
『電話、ハンズフリーにして』
「っ、マジで……いやそれは無理だろ……音で子供が起きたら大惨事じゃねえか」
 さすがに怖くなってそう言うと、別の選択肢が出される。
『なら、ワイヤレスイヤホンに出来る?』
「……ん、うん」
 俺は尻丸出しのまま一回ソファから降り、指をティッシュで拭いてから、スマホの明かりを頼りにローテーブルの下の網棚の物入れに手を伸ばした。
 手のひらサイズの白くて丸っこいケースを取り出し、蓋をカパッと開けると小さな充電式のワイヤレスイヤホンが現れる。
 片方分だけそれを取り出し、左耳に入れると、自動的にブルートゥース機能が働き、渚の声がじかに鼓膜に響くようになった。
 マイク機能も付いているので、通話にも支障はない。
「できた」
『両手自由になった?』
「ん」
『ふふ。俺も自分の触ってるよ』
 ぐっと近くなった感じのする渚の声に高揚感が増す。
 電話越しの渚を想像して興奮した。
 一人だろうから、きっと今は獣面人身の姿だろうな。
 ホテルのベッドで、キラキラの美青年から毛むくじゃらの姿に戻って、でっかいちんちん握ってるかと思うと……すげぇ興奮する。
 暗闇の中でさらにイヤホンだと、本当にそばに居るみたいな気分だし……。
『今、どんな格好してるの』
 聞かれて、変態電話かよ、って吹き出しそうになった。
 でも、イきたいから真面目に答える。
「どんなって……いつもと同じだよ、上がTシャツで、下がスエットで……今は尻だけ出てるけど」
『お尻出してるの? エッチだね……。乳首は?』
「……。出した方が良ければ…………」
『じゃあ、めくって出して、可愛い乳首……。それで、どんな風になってるか俺に教えて?』
 優しく問われて、俺は頬を熱くしながらTシャツを乳首の上まで捲り上げた。
 普段から一枚では透けるようになってしまった大きめの突起がぷるんと上向いて飛び出す。
 それを指の腹で転がしながら、感触を確かめた。
「……コリコリして……っ、触ると、ちんぽの奥ジンジンする……」
『ああ、舐めたいな……。湊、そこ感じやすいよね。後ろから挿れながら捏ね回してあげると、お尻の穴が俺のに可愛く吸い付いてきて、ほんと可愛かった……っ』
「んぅぅ……っ! はあっ……っ」
 渚にバックから突かれながら、硬い肉球で乳首をクリクリとイジメられた時の事を思い出してしまう。
『意地悪して、乳首だけいっぱいいじくって、下は動くの止めたら、奥もっとゴリゴリしてってねだるみたいにお尻振ってきて……思い出すだけで凄く興奮する……』
 かあっと?が熱くなって、前回の発情期の、やらしい記憶が蘇る。
 乳首だけでイッてみせて、っておねだりされて、延々とそこだけ捏ねくり回されて。
 全然動いてくれない渚のちんぽをキュンキュン締め付けながら、ほぼオッパイだけでイかされたんだっけ……。
 時間かかってもどかしくて辛かったけど、その分、凄い気持ちよかった。
 また、してぇな、あんなの……。
 堪らなくなって、尻の狭間にもう片方の手をそろりと下ろし、濡れすぎてトロトロになってる穴に人差し指と中指を押し込んだ。
 ずにゅ……と抵抗もなく指先が入って、くぽっ、くぽっとやらしい水音がそこから上がる。
 もう片方の手では乳首を弄りながら、電話口の渚を煽った。
「はぁっ、俺……、今すぐハメてほしくて我慢できなくなりそ……渚も、してんの……?」
『してるよ、可愛い湊想像して擦ってる』
「あはっ、嬉しい……っ」
 自分でイイ所を探して指で刺激するんだけど、イマイチ上り詰めるには足らない。
 もどかしい……。
 渚の声には、震えるほど感じるのに。
 もっと激しく指を出し入れしながら、マイクにわざと濡れた喘ぎ声を聞かせる。
「はあっ、なぁ、渚、俺の中でイッて……っ」
『ウン、湊のお腹がいっぱいになるくらい中で出すね……っ、好きだよ、湊……!』
「んあっ、……出して、なぎさぁ……っぅ……っ!」
 すき、だいすき、渚。
 指を食い締めてた穴がヒクヒク痙攣して、足の指先にぐうっと力がこもる。
 同時にキューンと腹の奥から絶頂感が湧いて、ビュッビュッとローテーブルに向けて俺の精液が飛んでしまった。
「う、わあ……」
 俺、いま、ほぼ渚の声だけで、イッちまったかも……。
「はあっ、はあっ……」
 まだ脚の付け根をピクピクさせながら、呼吸を繰り返す。
 出したけど、ちんぽはまだバッキバキだし、穴の方は物足りないしで、全然足らねぇ……。
 渚もいねえのに、完全に発情期のピーク、来ちまったかも……。
「ごめ……、俺、なんかもうヤバい……渚がいねぇのにこれ以上煽られんの、辛いから……薬飲んで寝る、な?」
『あっ、ま……待って、湊……』
「なーに……まだ、イケてねえの? 渚……」
 んー……俺から煽っといてここで逃げんのは、ちょっと無責任だっただろうか。
『そのっ、実は――、あっ、ごめん、スマホの電池が切れそう……っ』
「……? なぎ、」
 ブツ、と会話が途切れて、イヤホンからは何の音も聞こえなくなってしまった。
 同時に、スマホの画面が虚しく光る暗いリビングで、一人で発情しまくった下半身を晒してる自分の惨状に気付く。
 しかもテーブルの上には指拭いた時のティッシュと謎の液体……。
 ううっ、早くふかねえと……!
 でも、こんなズブズブのベトベトになってる尻でもう一回パンツ穿きたくない。
 俺は膝に引っかかってる下着とズボンを一旦床に脱ぎ捨て、下半身丸裸で慌ててソファから降りた。
 キッチン横の人感センサー付き足元灯を灯し、ティッシュを捨てて必死で手を洗う。
 カウンターからキッチンペーパーを何枚もガサガサ取り出して、またリビングに戻ろうとした時――。
「……?」
 い、今、遠くでガチャっと音がしたような。
 うち……じゃないよな。
 夜遅くまで出掛けてた近くの部屋の住人が帰ってきた音かもしれない。
 そんなことよりも、早く証拠隠滅……!
 ラグの上で膝を落とし、ローテーブルにべっとりついた精子をペーパーで拭き取ってゆく。
 何往復か拭いた後に全部丸めてキッチンの中のゴミ箱に捨てに行き、最後に台拭きを濡らしてもう一度テーブルを拭いた。
 念入りすぎるかもしれないけど、航と仁美はとにかく匂いに敏感なんだ。
 半端な片付け方だと絶対、朝起きた時クンクンして『なんのにおい? なんかおいしいもの食べた?』って顔するし、場合によっては舐める。
 それだけはちょっと嫌だ……。
 膝立ちで、ローテーブルに這いつくばるように懸命に天板を拭いていたら、なぜか背後の暗闇にハッハッという獣の息遣いを感じた。
 えっ。
 ドタバタしてたから、仁美が起きちまったか……!?
 俺、まだ尻丸出しなのに――。
 ギクリとして身体を少し起こした瞬間、重くて毛だらけの巨大な人型の生き物が闇の中から飛び出し、俺の背中に乗っかった。
「ふぎゃあぁ……っ!?」
 驚きで叫ぶ俺の口を、毛むくじゃらの手の平が覆い、声を封じる。
 だ、誰だ!? もしかしてっ、渚!?
 でも渚は今頃広島のホテルにいるはずで……っ!
 じゃあ、こいつは……っ、だ、誰……っ。
 騒いだり抵抗したりしたら、子供に手を出されるかも――その恐怖で、全身が強張る。
 やがてその獣人と思しき不法侵入犯は、俺の背中に密着し、腰を乱暴に引き寄せてきた。
 ぬめっとしてぶっとい、ケモノのちんぽの感触が濡れた尻をねっとりと撫で、心臓がドドっと三倍速くらいで跳ねる。
 頭がバカになりそうなくらい発情が高まって、訳が分からなくなった。
「んん……っ、んんーっ!」
 背後に抗議をしても、ハァハァという低い息遣いが聞こえるばかりで、組み敷いてくる腕の強さは変わらない。
 緩くなってる穴にちんぽの切っ先が押し当てられて、これが欲しかったんだろうと煽られるみたいにヌプッヌプッと窄まった部分をノックされた。
「……!?」
 身体の奥底から、俺の全てを支配する勢いで激しい欲望が生まれ、満ちてゆく。
(早くっ、これが欲しい、挿れて、メチャクチャに突いて欲しい……っ)
 その謎の感情の爆発に驚愕して、ブルブルっと首を振った。
 待て待て待て!
 これは渚じゃない、渚じゃないはずなのにどうしてだよっ……!?
 でも、血液が沸騰するみたいに、俺の全部が狂っていく。
 ――自分を裏切る昂りに愕然とするうちに、背後の男が、ヌメヌメした雄の切っ先を俺のナカに深くねじこんできた。
「ンふぅう……っ!」
 口を塞ぐ指の間から、だらしなくトロけた俺の喘ぎ声が漏れる。
 強く淫らな圧迫感と共に押し入ったその形は、明らかに犬獣人のモノで、既に準備が出来上がっていたのか、バキバキに硬くて熱い。
 そして俺のアナルはと言えば、熱く潤みきり、心理的抵抗とは裏腹に、嬉々としてペニスを根本まで受け入れてしまっていた。
(嘘だろっ、何でこんな……っ!)
 悔しくて情けなくて、泣きそうになる。
 いや、泣いてる場合じゃねえ、早く外さないと、亀頭球が膨れて中出しされる……!
 暴れてどうにか結合している下半身を離そうとするのに、男の太い腕はがっちりと俺の腰をホールドしていてビクともしない。
 絶望感と共に、背後で遂に獣人が腰を俺の尻にズプンと打ち付け始めた。
 最初の何度かの往復こそ、ヒクつく俺の中をゆっくりと味わうような動きで。
 けれどそれはすぐに、犬獣人独特の超絶に速い腰使いに変化して――。
「んくぅ……っ、ンふんんん……ッ!」
(やばい、この感じっ、渚とおなじっ……!)
 子宮を突き上げられる久々の快楽を、欲求不満の身体にこれでもかという程に味わわされて、俺の中から理性が消しとばされてゆく。
 気持ちいい、もっと欲しい、このまま最後まで――ナカにたっぷり出して……。
「ンッ、んくっ、ふっ」
 背中を仰け反らせ、俺の中を犯し尽くそうとするペニスを無意識に強く締め上げる。
 すると、俺の口を塞いでいた大きな手が外れた。
「ぷはぁっ……っ!」
 ――せっかく口が自由になったのに、俺の喉から溢れたのは、エッチな喘ぎ声ばかりで。
「あはぁっ、……奥っ……当たってっ、んあっ、そんな突いたらあっ、気持ちい……ァっ……!」
 背後の獣人が、応えるようにグルルルル、フーッ、フーッと切羽詰まった唸りを返す。
 あぁ、これヤバいっ、多分こいつっ、もうすぐ……っ!
 なけなしの理性を取り戻し、腰をひねって逃げようとした瞬間、獣人の毛むくじゃらの手が俺のブルブル上下していたペニスを握り、腰に回っていたもう片方の腕が胸のあたりにずりあがった。
「んふぁ……っ」
 驚く間も無く、先走りでトロトロになっていたちんぽが硬い肉球で挟まれるみたいに扱かれ始め、腰がガクガクと揺れ、全身が激しい快楽に支配される。
 同時に腫れぼったい乳首も引っ張ってもてあそばれ、そこと直結してるみたいにアナルがヒクヒク男を搾り上げてしまう。
 イヤなはずなのに、前も後ろも強姦魔に激しくジュポジュポ犯されて、もう一瞬も我慢できない。
 迫り上がる絶頂感が下腹の奥で爆発して、物欲しげに男を締め上げてしまう痙攣がついに始まった。
「んはぁっ、……イク、っ……イってる……っ、もっ、むりっ、許し……っ」
 言葉だけの拒絶は虚しく無視されて、淫乱にうねり続けるナカを容赦なく突き上げられ、その度に何度もイキ果てる。
 その内、まるで射精のしどころを迷うように子宮口の近くがエロい動きでグリグリ探られ始めて、俺は涎を垂らしながら首を振った。
「やっ、ナカはっ、ナカはらめ、あぁあ――っ……!」
 ついに、激しい息遣いと共に最奥を貫いたままちんぽの動きが止まり、ドクッドクッと凄い量の熱液が俺の内側に放たれ始めた。
 入り口近くではしっかりと亀頭球が膨らみ、俺の中を大量の精液が満たしてゆく。
「んン……っ、出てる……っ、気持ちい……っ、らめって、言ったのにぃ……っ」
 渚じゃない男のちんぽでイカされて、あまつさえ中出しまで許してしまうなんて、俺……。
  背後にお尻を突き出した格好で、今もなおドプドプと出され、逃げられない状況でナカを汚され続けている事への絶望感が湧く。
 けれど、その瞬間。
「ごめん、中で出したらダメだった!? 湊、準備してたみたいだったから、いいのかと思っちゃって……っ」
 慌てたみたいな声が後ろで上がって、俺は目が点になった。
 ……。
 中出しした後でそんな間の抜けたことを言い出すウッカリした犬獣人なんて、一人しか知らねえな……。
 俺はテーブルの上のスマホを掴み取り、身体をひねってバックライトで後ろの獣人を照らした。
 黒目がちな可愛い目と、垂れ耳、金色のフサフサした豊かな毛……。
 まさかが本当になり、素っ頓狂な声が出る。
「なんで……っ!?」
 驚きすぎて頭が混乱して、それ以上言葉が出てこない。
 呆然と強姦魔改め、何故かここにいる俺の旦那の顔をまじまじと見た。
 身体の方は、毛が生えてるとはいえ、素っ裸。
 広島に服だけ残してテレポーテーションでもしてきたんだろうか。
 って、そんな訳ねぇよなぁ……。
 安堵と呆れでハーッ、と大きな溜息が出て、俺は力の抜けた背中をフサァっとした毛皮に埋めた。
 渚がそんな俺の尻を膝の上に乗せながら正座して、後ろでしどろもどろに言い訳をし始める。
「……う、うーんと、ごめん。その……。一緒に行ってた父さんや兄弟達から、湊さんがキツそうだから、お前は今日中に帰っていいって言われて……本当は、夜の新幹線で戻ってきてたんだ……」
「っ……。じゃあ、一体さっきはどこから電話してたんだよっ……」
 ついつい責める口調になってしまう俺に、落ち込んだみたいな小さい声が答えた。
「……実家の、今空き部屋になってる俺の部屋から……。お土産のもみじ饅頭届けに行ったら、母も義姉さんも寝静まってたものだから、勝手に上がって置いてきて、その時、つい出来心で湊に電話したんだ。その、俺がいなくて寂しがってくれてるといいな、って」
「……。それで、俺が寂しがってるを通り越してエロエロな感じで出ちまったから……」
「うん、湊はあまりに可愛すぎるし、引っ込みがつかなくなっちゃって。最後にちゃんと言おうとしたらスマホの電池が切れちゃったから、急いで帰ったんだけど……家のドア開けたら、湊のフェロモンが凄い充満してて」
「それで我慢できずに、素っ裸に……?」
「うん、犬になって、服は脱ぎ飛ばして、中に飛び込んだんだ。そしたら、暗闇の中に白い湊のお尻が浮かんでて……ちょっとそこから訳分からなくなっちゃって……あんな乱暴な感じでして、本当にごめん……最近、夢精するくらい湊としたくて堪らなかったから……」
 そんなに我慢してたのかよ……。いや、俺も結構、我慢してたけど。
 最近忙しくて、発情期以外じゃ全くセックス出来てなかったしな。
 そう考えると、責任は俺にもある訳で。
「……いいよ、もう。帰ってきてくれたんだし、嬉しい」
 後ろで可哀想なほど落ち込んでる渚の頭を、俺は手を伸ばしてヨシヨシと撫でた。
 ついでに、言い聞かせるみたいに付け加える。
「ーーでも、次にこういう事があった時は、サプライズはしなくていいからな。さっきなんか、てっきり俺、渚のこと強姦魔だと思い込んで――」
 言いかけて、俺は途中で口をつぐんだ。
 しまった……こんなこと言ったら……。
「えっ、まさか……。湊、俺のこと、さっきまで気付いてなかったの……?」
「あっ、いや、その」
 今度は俺の方がしどろもどろになってしまう。
 まさか、見知らぬ男に入れられてるつもりでイッてしまったなんて、言ったら落ち込むよなあ……!?
 でも、もう遅かったらしい。
「それで、あんな可愛い声で中出しダメって言ったの……? お尻の穴、絡みつかせながら……?」
 うわぁっ、まずい! 「いやっ、そんなことねえし……っ。ほら、俺たち番なんだからさ、そもそもお互いにしか欲情しないわけでっ、当然分かってたって言うか」
 なんだか気まずい言い訳をする俺に、渚が背後で不穏な空気を出しながら低く唸る。
「湊……俺、これから湊の発情期中は、やっぱり死んでも離れないことにするから……」
「あ、うん……有難う……」
 脅迫なのか愛の囁きなのか分からないその言葉に、俺は引き攣った笑みを浮かべつつ、礼を言うしかなかった。


 翌日、子供達は俺の母や親戚に預けられてゆき、俺たちは同じマンションの、普段は使われていない一室に籠もった。
 寝室に大きなベッドだけが置いてある、2LDKのこじんまりした角部屋で、日当たりが良くて気持ちいい所だ。
 持ち主は渚のおじいさんだけど、三ヶ月に一度、特別に貸して貰うことになっている。
 そこですることと言えばセックスだけだから、ちょっと恥ずかしくはあるんだけど……。
 蜜月が始まってしまえばそんなことお構いなく、朝から晩までずっとお互いを貪り合う。
 ベッドの上で渚と繋がり、夢中で溺れるのももちろんだけど、発情が少し落ち着いてくれば、二人きりで久々のデートや散歩に出かけたりもする。
 俺のフェロモンはもう渚にしか効かなくて、人に迷惑をかけることもないしな。
 俺と獣の姿になった渚が外を散歩している姿は、誰がどう見ても飼主と犬。
 まさか、毎晩いやらしくて激しいセックスをしてるなんて誰も思わないだろう。
 ――だろう、けど。
「……ワン!」
 ――ベッドの上で、さっきの散歩中のことを思い出していたら、完全に獣になってる渚に吠えられた。
 何でボンヤリしてるの、って感じで。
「も、急かすなよ……っ、んぁあ……っ、抜けねぇ……っ」
 仰向けにひっくり返って息を上げながら、散っていた意識をアナルに集中する。
 そこには、散歩中ずっと、俺のナカ奥深くまで埋められていた異物が黒々とした頭を出していた。
 真っ黒で滑らかな矢印みたいな形状の、アナルプラグ。
 エッチの合間に散歩に行くのに、フェロモンと、中出しされた精液がドバドバ垂れるのを防ぐため、って理由で買った気がするけど、どう考えても渚の趣味だと思う。
 こんなスケベ過ぎる一面もあるとか……結婚した時にはあんまり分からなかった。
 自分で抜こうとしても、奥が太くて根本が細い、引っかかる形状のせいか抜けなくて、さっきから焦ってる。
 渚は覆いかぶさるようにして俺の身体を跨ぎ、こめかみに浮かぶ冷や汗をべろべろと舐めていた。
 畜生、これ絶対、脳内浮気の仕返しされてる……。
 さっきまでこれ入れながら近所を結構な早足で歩かされて、ナカがゴリゴリ擦られて……何度もイキそうになるのを堪えた。
 でももう、我慢できない……。
 落ち着こうと息を大きく吐き、もう一度、プラグの尻尾を指で掴んで引っ張る。
「んン……っ!」
 徐々にアナルが拡がってめくれ、一番太い部分までもう少し、っていう時に、ビチャビチャと音がして、乳首を薄い舌で舐め回された。
「はぁっ、ン……!」
 感じすぎてびくっ、びくっとまた尻を締めてしまい、せっかく出かけてたプラグが飲み込まれる。
 ひっ、酷過ぎ。
「くそっ、邪魔すんならさぁ、渚がこれ抜いてくれよ……っ」
 ずっぷりハマって筋肉の動きに合わせて揺れてるオモチャを上向けて懇願する。
 すると渚は少し後ずさりして、俺の脚の間に立ち、尻の間に鼻を突っ込むみたいに頭を下げた。
「ちょっ、何でその姿のまんま……っ」
 白い犬歯が、シリコン製のプラグの端っこを器用に捉え、ずいいーっと引っ張られ始める。
 渚の上下の歯の間からハッハッと温かい息が当たり、それだけでもゾクゾクする程気持ちいい。
 異物がすこしずつ外に出て、一番太い部分まで抜けそうになった時、カリっと擦れる音がして牙が滑り、渚の口からプラグが外れた。
「んぅっ」
 また元の木阿弥で奥にプラグを呑み込んでしまい、爛れた快感に涎を垂らしながら仰け反る。
 もう一度咥え直されたけど、またうまくいかずに滑って、アはぁと甘い吐息が漏れた。
「もっと、ちゃんとぉ……っ」
 堪らず、股の間に顔を突っ込んでる渚の首を撫でて懇願する。
 ううっ、飼い犬に何かいけない芸を仕込んでる飼主みたいだ。誰も見ちゃいねえけどっ。
 頬を熱くしてる俺の目の前で、プラグがしっかりと咥え直される。
 もう一度、前立腺が太い部分で強く擦られる淫らな圧迫感が俺を襲った。
「あ……あ、アー……っ!」
 ぬぽっと音を立てて栓が抜けた途端、堪え切れずにイき果てる。
 下腹がビクッ、ビクッと痙攣する度に、数時間前に中出しされた体液がトロトロと穴からこぼれ落ちた。
 それを躊躇なく渚がビチャビチャ舐め回して綺麗にし始め、這い回る舌の感触に下腹が悶える。
「待っ……、はぁ……っ」
 そんなの、舐めてくれなくたって大丈夫だから、早くまた、この穴を埋めて欲しい……。
「なぎさっ、はぁっ、なあっ、入れて……っ」
 浅いとこでイクより、奥を突いて欲しくて、俺の我慢はもう限界だった。
 目の前の可愛い金色の犬が頷き、顔はそのままで、身体だけが人間のそれに変わってゆく。
 尖った歯の並んだ口から舌が伸びて俺の額を舐め、毛の生えた肉球付きの指で膝を掴まれて胸に付くほど倒された。
 渚の人間とは形の違う極太ちんぽが易々と俺の中に入り、イッたばかりで敏感になっているアナルをギチギチに拡げて侵入してくる。
「はぁあーっ、……これ好き……っ、ちんぽきもちいい……っ」
 ここ数日間で中出しされ続けたせいで、ご無沙汰だった俺のソコも奥の奥まで柔らかくひらいて、渚の形に馴染んだまま吸い付くようになっていた。
 温かい身体が上にのしかかるように俺を抱き、ハッハッと熱い息が耳にかかる。
「湊の中、凄い……ここ、寂しくなっても俺しか入れちゃ、駄目だから……っ!」
 ズンッと強く突かれて電気が走ったようになり、もう一度無理矢理絶頂に連れていかれそうになった。
「んはぁ……っ! いぃ……っ、奥やばい……っ、もっとして……っ」
「そんなに可愛いこと言って、また妊娠させちゃうよ……っ」
 ずろろ……っと引き抜かれて、また容赦なく子宮口に向かってちんぽを突き立てられる。
「はぁあ……すき……またイク……」
 溢れるほどの精液をヒクつく中で貪欲に吸い上げながら、俺はまた、渚にイかされる幸福を味わった。
 中でまた渚の一部が膨らみ、外れなくなってから、ボンヤリしてた俺の上体が起こされる。
 いわゆる対面座位、てやつで、膝の上に座るみたいな格好だ。
 俺は手ぐしで渚の金色の毛を優しく撫で梳きながら、その首筋に顔を埋めた。
 全身フワフワの毛が生えていて、いい匂い……というよりちょっと獣臭くて、凄く温かい、大事な大事な俺のつがい……。
 スリスリと感触を堪能していると、密生した毛がすーっと肌に吸い込まれるように消えて産毛になり、密着している獣人が、目の覚めるような金髪の美青年に変わってゆく。
 端正な顔立ちの、真摯な瞳に見つめられて、癒やされモードだったのに、急にドキドキと落ち着かなくなった。
「……あのなっ、せっかくナデナデして幸せに浸ってたのに何で引っ込めるんだよ、毛」
「うーん、……その、ちゃんと話がしたくて……?」
「……何……」
「好きだよ、湊。ずっと一緒にいるし、これから死ぬまで、寂しい思いさせたりなんかしないようにするから」
「っ……」
 その言葉に、熱い涙が溢れてくる。
「俺っ、俺さ……渚と結婚するまでは寂しかったけど、結婚してからはっ、ずっと幸せだしっ……渚がいなくても、少しくらいは大丈夫だから……あんまっ、へんな心配すんなよなっ」
 ウン、ウンと頷く渚と唇を重ねる。
 人間の顔してても犬舌な渚のべろは、薄く、独特のヌルついた感触で、堪らなく可愛い。
 優しい口付けに溺れながら、俺は腰を踊らせるみたいに揺らし始めた。
 渚もゆっくりと動き始めて、その摩擦がむずがゆい快感として俺のナカをビリビリと伝わる。
 人間のときの渚のそれも、奥をカリで掻き出されるみたいに擦られるのが堪らなく気持ちいい。
 ドロドロのちんぽの先を渚の腹に押し付けながらまた、絶頂を目指して昂ぶってゆく。
「湊、愛してるよ……」
「うンっ、俺、もっ……っ!」
 ――終わりのない快感の中で、俺たちはいつまでも互いを求め合った。


 一週間後、俺と渚は子供達を迎えに行き、無事に我が家に帰宅した。
「パパー! お父さん! 抱っこしてー!」
 獣面人身のやんちゃな航と、黒髪で完璧な人間姿の岬が二人して飛びついてきて、四つ足の仁美がグルグル周りを回って吠える。
「よしよし、ただいま。今度のお休みは、みんなででっかい公園まで散歩行こうな」
 俺は航を、渚は岬を抱き上げ、ソファに座ると、膝に仁美が乗ってきた。
 四人中二人は顔が犬っていう、俺の家族。
 少し変わってるけど、俺にとっては最高にカッコよくて可愛い旦那と、子供達だ。
 岬の頬をペロペロしてる渚の、垂れ耳の下にそっと囁く。
「また、二人きりでも散歩しような?」
 ――渚は、ドキッとしたように毛を逆立てて目を細め、でも尻尾をいっぱい振って応えてくれた。


end